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2012年7月3日 『日経産業新聞』(7面) 記事要約
「小さな巨人」 イーパーセル - 電子データ配信サービス
~ 大容量 ネットでやり取り - 日産など600社採用 ~
電子データ配信サービスのイーパーセル(東京都千代田区・北野譲治社長)は、大容量の電子ファイルを専用線並みの安全性・確実性を保ちつつ、インターネット上で割安にやりとりできるサービスを提供する。日産自動車など600社を超える企業を顧客に持つ。
自動車や機械といったメーカーは、国内外の部品メーカーなどと3次元CAD(コンピュータによる設計)データなどの大容量ファイルをやりとりすることが多い。専用線を使ったり、記録媒体にデータを落として物理的に配達するケースも少なくない。さらに、「オンラインストレージ」といわれるファイル配信サービスも普及している。
オンラインストレージサービスは、送り手側が専用サーバに大容量ファイルを送るとともに、受け手側にファイルのダウンロード用のURLを送る。受け手側はURLから専用サーバ上の大容量ファイルにアクセスしてダウンロードする仕組みだ。
これに対して、北野社長は「万が一、URLが目的の相手以外に渡った場合、機密情報である設計データなどが盗み見られる危険性がある」と指摘する。サーバ上にファイルのコピーを残すため、情報漏洩リスクもある。通信環境が悪い発展途上国などでは、ファイル自体が送れない可能性もある。
専用線並み安全性
イーパーセル社のサービス「電子宅配便e・パーセル」は、これらの課題をすべて解決した。
まず、送信側の大容量ファイルを自動的に圧縮・暗号化し、サーバへ蓄積することなく、受信側のサーバやパソコンへ送る。このため、サーバ上にファイルのコピーを残さない。
通信環境が悪く、途中でデータ送受信が中断した場合は、自動的に中断直後のデータから送受信が再開する。さらに、送受信中にファイルが壊れた場合も検知でき再送を促すため、通信環境が悪くても必ず届く。目的の相手に届いたかどうか、配送状況を確認できるトラッキング機能もある。
これらを可能にしているのは「独自の通信プロトコルを設計・採用しているため」と北野社長はいう。
認証や暗号化については、世の中に普及する方式を採用しているが、独自の通信手順を組み込んだ配信用のプログラムはすべて自社で開発する。送信側と受信側がパソコンに専用ソフトをインストールするだけでサービスの利用が可能だ。
グローバル展開
課題だったデータ送受信速度は、世界各地にサーバを設置することで、7月から従来の10倍以上に速めた。「目的の相手まで安全・確実かつ迅速に届く、いわば"電子宅配便"だ」と北野社長は胸を張る。
月額利用料は、約2万円(初期導入費は除く)から。大規模利用の場合は数百万円のケースもある。「専用線並みの品質保持しながら、料金はその数%程度で済む」と北野社長はいう。
同社は、1996年に日本人技術者が米国で創業。技術の高さは当初から折り紙付きで、最初に大規模契約を結んだ相手はリーマン・ブラザーズだった。
2001年には日本へ進出。今では日産自動車やコマツなどグローバル展開する国内大手を中心に600社超と契約している。大手の顧客からデータを受け取る企業を含めたサービス全体の利用者は6300社に上り、今も増え続けている。
グーグルなど提訴
同社の名前を一躍有名にしたのは、昨春に米国で起こした訴訟だ。グーグルやヤフーなどIT大手の13社を相手取り、同社が米国で保有する「ネットワーク環境に合わせてデータ圧縮率を調整する仕組み」など5件の特許を侵害していると提訴した。
これまでに、「ブラックベリー」を展開するカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)など5社とは和解し、ライセンス契約を結んだ。
現在、営業強化のため他社との提携も強めており、NECや電通国際情報サービスなど「電子宅配便e・パーセル」を取り扱うパートナー企業を増やしている。まだ小さいITベンチャー企業ではあるが、大きな可能性を感じさせる。
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